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ゲームの記録とか、稀に読んだものとか用です。

20240122 パルワールド:ただの露悪パッチワークだと思ったのに……。パルと過ごす幸せな時間を。

パルワールドを死ぬほどやっています。楽しすぎてヤバいです。

普段の私は日記を書くとき、「楽しかったー!!!」以上のことをあまり書きません。これは何度も繰り返し言ってきたことですが、3000円で20時間とか100時間とか遊ばせてもらったのに何故か文句タラタラでSteamでレビュー書いてる人達があまり好きじゃないからです。

だから私は、ゲームシステムについて、あまり突っ込んだ話をしたくないのです。

でもこのゲームは、世間の評判が賛否真っ二つだし、少しそういう話をした方が良いのかなと思いました。ただし、いつも通りの私として、「このゲームのここがすごい!!!」というラインを逸脱しない限りにおいて。

とりあえず今日は、「罪悪感のコントロール」という話をしたいと思います。

 

 

開始5分で植え付けられる贖いきれない原罪

トレイラーに出てくる3匹のパルです(このゲームでは、「ポケモン」に相当する存在は「パル」と呼ばれます)。

左から順に名を、モコロン、ツッパニャン、タマコッコと言います。

この子たちは別に御三家的な立ち位置ではなく、最序盤に出てくるかわいらしいキャラクター以上の意味を持ちません。

ところがこの子たちによって、ゲーム開始5分で私たちはとてつもない罪悪感を精神に植え付けられることになります。こんなにもかわいいモコロンを、ステゴロでボコボコに殴り続ける必要があるのです。体力を落とさないと捕獲できないからです。

殴りモーションや効果音も非常に作りこまれており、「今、私は、こいつを殴っている……」「痛そう、本当に痛そうだ……」「かわいそうだよ……」という感覚が胸がキュッとなるくらい伝わってきます。私が感受性豊かなのではなく、明らかに「露悪的」の度を越えた演出になるように調整されています。このステゴロを実際にやって「ポケモンでこれはねーよwww」などと笑い飛ばせる人間はほとんどいないでしょう。私達は途方もない罪悪感に暮れることになります。

ただの露悪ゲームだと思って買ったユーザーは、みんな己の行いを後悔するように作られているのです。

このゲームは、とてつもない胸の痛さを抱えることから始まります。

しかも、ゲーム開始数時間が経つまで、プレイヤーはこの3種類のパルとフィールドボス以外に遭遇する事はありません*1。ただポケモンを露悪的にするだけなら最初からもっとたくさんの種類のパルが出現しているはずです。この3種類しか画面に映らないのは明らかにわざとでしょう。この数時間の胸の痛さが今後全ての助走になるのですから。

 

幸せな拠点というせめてもの贖罪

色々なゲームをプレイしているユーザーには、このゲームが露悪的のラインをぶっ飛んで胸が痛くなるレベルの演出を有している理由がすぐに分かります。パルワールドがゲームシステム上一番ベースにしているのはポケモンでもBotWでもなくArkだからです。本当に、何の慈悲もない世界です。プレイヤーを含めて、パル達はこの残酷な世界に産み落とされてしまったのです。

この世界の悲惨さを理解する頃には、拠点が建てられるようになります。だから私達は思うのです、せめてこの拠点の中だけは幸せな世界を築こうと。たとえそれがどんなまやかしやごまかしであろうとも。

私が拠点の中で何かを建てようとすると、周りの子がみんな、今やってたはずの仕事をほっぽりだしてまで駆け寄ってきて作業を手伝ってくれるんです。そして完成するととびっきりの笑顔を見せてくれるんです。序盤で10匹ずつ捕まえることになるモコロンとツッパニャンが「手作業」の適正を持っているのは適当に決めたことではないでしょう。

 

夜になるとパル達は寝ます。足りない資源でどうにか揃えた粗末なベッドで、本当に幸せそうに寝てくれます。この子たちの寝顔を見て、私は、「ああ、本当に頑張って拠点を整えて良かった」と心から思いました。

 

拠点を頑張って拡張していくと数が増えていきます。まだ3種類しかいませんが、幸せな空間が広がっていきます。

 

パルの種類も増えて、みんなで採石場を建てている様子です。拠点でわちゃわちゃ動いているパル達を見るのは、銃を撃つパルを見るより50倍幸せです。(私は銃を撃つパルというハチャメチャな世界観に興味があってこのゲームを買ったというのに……。)

このゲームのパル達のモーションは本当に作りこまれていてとにかく愛くるしいのです。ただのパクリに出来る情熱ではないと思います。

 

どんどん広がっていく拠点とパルたち。

ベッドの配置には別に制限はありませんし、こんな風にキャンプファイアを囲むように設置しなければならないわけでもありません。でも、そういう風にしたくなるんです。やり方は人それぞれでしょうが、とにかく幸せな拠点という隔離空間を作りたくて仕方なくなるんです。プレイヤーが何もしていなくともツノジカやグランモスに巻き込まれて勝手に命が散るような世界で、せめて幸せな時間を手持ちの子達には過ごしてほしいのです。

 

温泉です。素材が本当に大変なんだけど、作って本当によかったよ。みんな幸せそうに仕事の疲れを癒やしてくれる。

 

拠点のみんなが楽しそうに集まって作業をしている図です。

この時点において、トレイラーにあるような労働は既にプレイヤーの脳内では搾取では無くなっています。だって拠点のパル達は、食料が安定供給される空間で身の危険の心配なく、一日中暇そうに広大な世界をうろつくこともなく、楽しそうに作業に没頭しているのですから。寒い夜も暖かな灯の側で、柔らかいベッドで眠れるのです。

パル達が安心して楽しそうに働ける環境を作ること、それが私の幸せであり、パル達の幸せ。これはMinecraftに始まる拠点作成ゲーのこれまでの作品と一線を画すところで、拠点を作るのは自分のためではなくパル達のためになるのです。人間というのは、自分のために頑張るよりも他人のために頑張る方が得てして幸福を感じやすいものです。

私がここまでパルを幸せにすることに執着してしまった全ての原因は、開始5分でモコロンをステゴロで殴る破目になったあの瞬間に帰属します。

ここまでに心理誘導が巧みなゲームはそうそうありません。

 

ああ、かわいい、かわいいな。幸せそうだな。そりゃそうだろう。だって君達は「なでる」どころか、同族からの愛すら一生受けることのない世界で生きてきたんだもの。

ここまで作り込まれたグラフィックを見て、本当にこれがただの露悪的なゲームなのかどうか、少し考えてみてほしいと思うのです。このゲームの製作動機が「ポケモンっぽい見た目でパクリをやったら露悪的で面白そうだと思った」なんて安直な発想ならこんな作り込みはやらないでしょう。

(会社の体質と宣伝の方法が露悪的なのは、私は否定しませんが。)(あと、Arkに絞って話をしましたけど、実際には何個のゲームの要素が取り入れられているのかちょっと数える気も起きませんけれど。)

 

 

そしてパルワールドはポケモンLEGENDSアルセウスになる

とはいえ、いつまでたっても罪悪感なんか感じていたら身が保ちません。何しろこのゲーム、パル1種類につき10匹目までは捕獲時に経験値ボーナスが入ります。プレイヤーレベルがそのまま文明レベルになるのでやらないわけにはいきません。たくさんの、本当にたくさんのパルをステゴロで殴って捕獲しなければいけません。

フィールドのパルが強くなってくるとプレイヤーも素手というわけにはいきません。素手やら斧やらは木の槍になり、金属製の槍になり、そして三連弓やクロスボウになる。この頃には物理でパルを殴って捕獲することに罪悪感などほとんど感じなくなってしまっています。

このあたりで思い出すのがポケモンLEGENDSアルセウスのプレイ感です。

アルセウスを最初にやったとき、多くのプレイヤーは面食らったでしょう。殺伐とした世界観もそうですが、「図鑑ポイントを稼ぐためだけに使いもしないポケモンを大量に乱獲して野に放つ」という、今までのポケモンで決して許されなかった行為をゲームシステム自体が推奨していることに。

それでも、最初はあんなに面食らってドン引きしながらプレイしていたはずなのに、いつの間にかプレイヤーが世界観に慣れてしまって、オヤブン個体がぶっぱなしてくるはかいこうせんを「あーはいはいはかいこうせんね」と軽々避けながら息をするようにポケモンを乱獲できるようになり、違和感も罪悪感もなくなってしまう。

そしてそこからが、本当のゲームの始まりなのです。

 

このように、ぶっ飛んだ世界観にプレイヤーを少しずつ「慣らして」いくレベルデザインは、並大抵の技術で実現できるものではありません。それが出来ないからCraftpiaに匹敵するゲームがほとんど生まれていないし、ポケモンLEGENDSアルセウスが評価されている理由の一つでもあるのです。

 

繰り返し、会社の体質や宣伝の方法が露悪的なのは私は何も否定しません。そういう要素がゲームに含まれていることも否定しません。

だけど、このゲームのクォリティは、ただの露悪的だとかパクリだとかいうラインとは天と地ほどの差があり、多くの既存のゲームとも明らかに一線を画しています。このゲームは巧みな動線によって明らかに成功しているのです。「露悪的でおもろそうだからやったろwww」と思って起動したユーザーであるほど、その想像を裏切ってパルワールドという世界観の中に一瞬で引き込んでしまうことに。

人を選ぶゲームなのは間違いがないです。最初にモコロンを殴らなければならないとき、それだけで辛いと感じて撤退する人も多くいるでしょう。2時間弱プレイしてどうしてもダメだと思って返金するのも仕方のないことでしょう。

だけど、単にデザインをポケモンに寄せてるとか、露悪的だとか、ゲームシステムを悪びれもなく似せてるだとか(パクリだとか)、そういう表面的なところで食わず嫌いをしてしまうには、あまりに勿体ないゲームであるように私は思うのです。

 

パルワールドは発売前からVtuberに先行プレイをしてもらうなど、地道な宣伝も積み重ねていました。そして実際にプレイした人間の期待も裏切ることがなかった。売上本数や同接記録が物凄いことになっているのには、きちんとそれだけの理由があるのです。

*1:例外はネムラムが夜に沸いた場合と襲撃イベント